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下宿生活

 実家を離れて都市部の短大へ進学することとなり、

私は緊張と不安の中にも、開放感を感じていた。

それは田舎育ちの少女が持つ都会への憧れも含まれていたが、

意味合いが少し異なっていたのは、これで母と祖母の板挟みから

解放されるという安堵に似た気持ちだった。

   しばらく嫁姑の軋轢を目にしないで済む。

   母と祖母にとっては甚だ失礼な話だと思う。

   年齢を重ねて祖母はますます頑固になっていたから、

   私は少しずつ母の方に同情するようになった。

   その一方、幼い頃に受けた愛情を思い返すと

   祖母に対して不義理を重ねているような罪悪感も

   無きにしも非ずだった。

   これを「葛藤」と言うのだろうか。


こんな気持ちでいることを二人には絶対言えるはずもなかった。


 私は、短大の近くで下宿生活を送ることとなった。

下宿生は、同じ短大の女子学生ばかりだった。

   朝夕の食事付き(日祝は無し)で、お風呂は順番制。

   洗面所とトイレが、同時に複数使用できるようになっていた。

   洗濯機は一時間使用につき一回100円だった。

   廊下に湯沸かしや調理ができる簡易コンロが備えてあった。

私は机とベッドとクローゼットが付いた4畳半の住人となった。

新しく購入したものと言えば、小さな食器棚と本棚兼物入れと

質流れ品の小型テレビ、格安のアイロンぐらいだった。

ちなみに本棚兼物入れは、今も使用している。

かれこれ33年も経っている。なんて物持がいいのだろう。

こうなると愛着がわいてくるような気もする。


 現代では、下宿している学生さんは少ないのだろうな。

門限はあるし、オーナーさんの管理下に置かれるし、

共同生活上ある程度譲り合わないといけないこともある。

私も最初はアパートを借りて一人暮らししたいと思っていた。

でも、今となっては下宿生活を経験して良かった

と思っている。

俗に「同じ釜の飯を食う」と言うが、なかなか楽しかった。

人見知りが強くて臆病な私だったが、

先輩や同輩の部屋を訪問していろいろなことを

教えてもらったり、他愛ない話で盛り上がったり

一緒にテレビを見てああでもない、こうでもないと言い合ったり。


何気ないことがきらきらと輝いて見える。

もう戻ることができない貴重な時間だった。




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テーマ : アスペルガー症候群・自閉症スペクトラム
ジャンル : 心と身体

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