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以心伝心

役員や上司の慰留を強引に振り切って、退職を決めた私は
しばらくの間、解放感に浸っていた。

退職日は諸処の都合で4月1日になったが、退職の手続きは
年度末のきりがよいところで、3月31日にすることにした。
最後の出社となった。

当日、事務長氏は休みを取っていた。
忙しい月末まして年度末に休みを取るなんて、異例のことだ。
余程、私に会いたくなかったのだろう。

私も彼に会いたくなかったからほっとした。
彼に対して、感謝の言葉を滑らかに口にする自信がなかった。
最後の最後に以心伝心するなんて皮肉なことだと思った。



営業事務に異動してから数ヶ月が経った頃、
私は給湯室で洗い物をしていた。

事務長氏が入ってきて、私に話しかけた。
まるで過去の確執など何もなかったかのように。

私は話したくなかったので、答えなかった。
それでも事務長氏は、問いかけを止めなかった。
仕方がないので、最低限の返事をした。

事務長氏は、給湯室を出て行った。
私のことを、恐ろしく執念深い奴だと思ったに
違いない。

私だって、豪放な性格になりたいと何十回、
何百回と願ってきた。
嫌なこと、悲しいこと、怒りなどの負の感情は
一刻もはやく忘れ去りたい。
忘れたいのに忘れられないから苦しいのだ。
自閉症スペクトラムの特徴)

彼から「そんな人間、俺は要らない。」と言われて
号泣したときから、私の心は凍りついてしまった。

上司としての彼にはもちろん感謝している。
しかし、それと同じくらい人としての彼には
正反対の感情を持っている。
どうにもならないから困っている。

でももう会うことはない。良かった。



手続きを終えてから、社内を回って挨拶をした。
後悔も心残りも感じなかった。
ただ、これからの身の振り方だけを考えていた。




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テーマ : アスペルガー症候群・自閉症スペクトラム
ジャンル : 心と身体

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