FC2ブログ

表裏一体

私に任された業務は、法人の収支に関わることだった。

「福祉」の「ふ」の字もわからない私にとっては、責任が
重すぎて強いプレッシャーを感じていた。



前任者による引き継ぎは、最低限のものだった。

新しい仕事の合間を縫って、2~3時間長くても半日程度
事務所にやってきて、基本的なことだけ教えられる。

一つの段階が終わるまで私に作業させて、その途中で
分からないことがあれば聞くように言われた。

私が作業をしている間、前任者は持参のノートパソコンで
新規の仕事をしていた。

私はどこが理解できないのかもよくわからないまま、
資料を見てPCソフトをあちこち試し打ちしながら覚える
しかなかった。

仕事の引継ぎは前任者の都合で飛び飛びに行われ、
全部まとめても数日間にしかならなかった。



私は不安で仕方なかった。
ただでさえ新しい環境に適応するのに時間がかかる。

これは自閉症スペクトラムだと自覚してから気付いた
ことだが、私には聴覚の過敏と鈍麻が同居していた。

・説明を受けているまたは作業をしている際に、周囲の
 会話や電話に注意を奪われてしまい集中できない。

・一旦集中してしまうと、電話や来客に気付かない。

新しい環境に慣れるまで、私の聴覚は過敏と鈍麻の
どちらかの反応しかできないようになっているらしい。

常に過敏と鈍麻の間を往復して、「適度」がない。
過敏と鈍麻が表裏一体なのだった。



フルタイムの事務の女性は「仕事は楽しくする」が
モットーのようで、その表現力と間合いの的確さ
私は驚嘆していた。

その一方で彼女から発せられる会話に、
始終困惑していた。

私は定型者のように不要な音を遮断できない。
従って仕事に集中できなかった。

たまに運よく仕事に集中できていると、電話や
来客に気付かない。

彼女は堂々と意見を述べる人だったから、
しばしば私の不注意や手違いを指摘した。

私は彼女のことが苦手になってしまい、
できることなら一人きりで仕事をしたいと
思い始めた。


このままではいけないと実感していながら、
どうすることもできない焦燥感を抱えていた。





関連記事
スポンサーサイト



テーマ : アスペルガー症候群・自閉症スペクトラム
ジャンル : 心と身体

コメントの投稿

非公開コメント

記事から探す
気になる語句を入力して「検索」をクリックしてください
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログについて
参加してます
最新コメント
最新トラックバック
ありがとうございます